CALCITE カルサイト 方解石 CaCO3
|
|
炭酸カルシウムの鉱物で、結晶質でないものは石灰岩として大量に産出する。硬度が低いのと、一定方向に割れやすいため、標本としての評価はやや低いが、多様な産状と結晶形態により、水晶や蛍石のように専門のコレクターがいる鉱物種類である。 石灰岩に生じた亀裂に熱水が通った場所や石灰岩が接触変成をした場所、鉱脈の末期生成物、玄武岩や安山岩の晶洞など多様な産状で、方解石の結晶が産する。 私の方解石(カルサイト)との出会いはアンモナイト化石の断面の空隙に生成した方解石結晶であった。これは方解石の結晶産状としては特殊なもので、私自身この産状での標本採集はできていない。 現在私が所有している方解石(カルサイト)標本で最も立派なものは、岩手県和賀仙人鉱山のものである。これは高校時代に湯田町を訪れた際に、鉱石標本を持っている方がいないか訪ね歩き、そのとき見つけた方にもらったものである。和賀仙人鉱山の露天掘り跡には一部石灰岩が露出しており、所々に晶洞が見られるが、数センチまでの犬牙状結晶である。それがこのときいただいた方解石(カルサイト)標本は15センチほど高さのある、少し透明感のある美しいものである。各地の石灰岩採掘場では時々大型の結晶を産していると聞くが、標本市場には全くと言っていいほど流れてこない。そのときはあまりの結晶の大きさに驚き大変嬉しかったが、今でも標本のレベルとしては秀逸なものと思う。 次に出会ったのは、長野県甲武信鉱山であった。住友金属鉱業が採掘した金鉱の採掘跡の一部に奥行き2mはある晶洞が発見され、そのとき最大30センチちかい菱形の結晶を筆頭に、それよりも小さなサイズの方解石(カルサイト)標本を数多く産した。私の手元にあるものは15センチほどのものであるが、それでも立派なものである。結晶表面が少し溶けていて、透明感もない結晶ではあるが国産の標本としては大変迫力のあるものである。この採掘跡の別の場所からも方解石(カルサイト)を産し、そちらは透明感のあるアイスランドスパーと言えるような良結晶を産した。 その次に出会ったのは神岡鉱山である。神岡鉱山は接触変成タイプの鉱床であり、カルシウムに富む鉱物を各種産するが、その筆頭と言える鉱物が方解石(カルサイト)である。晶洞生成物の最末期生成物として金属鉱物や水晶などの結晶の上に方解石(カルサイト)が結晶している。この産地のものはマンガン分を含んでいるらしく、紫外線ライトを当てると赤く光るところも魅力的だ。釘頭状と呼ばれる平べったい結晶が最も多いが、平板状の結晶や犬牙状のものも産し、神岡鉱山産方解石は標本市場でも割りと流通しているので、各種晶相のものを集めるのも面白い。 その次にであったのは北海道のコウノマイである。ここは玄武岩を砕石目的で採掘しており。玄武岩の中にノジュールのように丸い球がはまっている。この丸い球を割ると、中は空洞となっており、空洞の内壁は玉髄や水晶、淡い紫水晶となっている。その晶洞の中には、方解石(カルサイト)結晶が、充填しているものもあり面白い。標本市場ではウルグアイやブラジルの玄武岩晶洞中の紫水晶や方解石(カルサイト)が大量に流通しているが、量的にも質的にもかなり劣るとは言え、北海道で同じような雰囲気のものが出ることが興味深い。 日本の主な方解石(カルサイト)産地 北海道紋別市コウノマイ 秋田県鹿角市不老倉鉱山 岩手県湯田町水沢鉱山 岩手県湯田町和賀仙人鉱山 長野県川上村甲武信鉱山 岐阜県飛騨市神岡鉱山 岐阜県赤坂金生山 三重県紀和町紀州鉱山 岡山県高梁市布賀 |
日本の鉱物標本 英名リスト