魚眼石 APOPHILLITE KFCa4(Si8O20)・8H2O
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和名は、魚眼石と書いてぎょがんせきと呼ぶ。結晶の頭に対して垂直に割れやすく、その割れた面が魚の眼の濁りに似ていることから魚眼石と命名された。フッ素やカリウム、カルシウムを含む珪酸塩鉱物で、主な産状は玄武岩や安山岩中の晶洞部分に産するものと、接触変成帯の石英脈や方解石に伴うもの、花崗岩ペグマタイトの晶洞に産するものがある。
私とこの魚眼石(アポフィルライト)との出会いは、神岡鉱山であった。世界的にはインドの玄武岩中から産するものが有名で、国内から立派な標本を産することを知らなかった。
私が大学生の頃(1990年)、神岡鉱山の探査課で神岡鉱山から産する鉱物の結晶標本が買えるということを聞きつけ、電話して訪問した折、インド産とまではとてもいかないが、保管庫に並べられた魚眼石(アポフィルライト)の標本の多さに圧倒された。神岡鉱山と言えば、今でこそ数多くの鉱物標本の産出で知られるが、当時は何故か標本があまり標本市場に出回っておらず、あまり晶洞が見つからないのか、それとも鉱石の管理が厳格に行われているのかと思っていたのである。それがその探査課の保管庫には、きらびやかな水晶や魚眼石(アポフィルライト)、方解石の結晶が所狭しと置かれ、まさに鉱物コレクターにとって夢の場所であった。この探査課の保管庫には、3回ほど訪れたが、訪れるときごとに、多く置かれている鉱物の種類が異なり、いまこの鉱物種の晶洞が見つかりましたよという、現役鉱山ならではの臨場感がたまらなく嬉しかった。特にこの魚眼石(アポフィルライト)は晶洞が見つかると大量に産出するようで、標本の餅箱に何ケースも同様のタイプが並べられていた。方解石を伴い不透明だが大型の魚眼石(アポフィルライト)結晶のタイプ。透明で美しいものの結晶がやや小型の魚眼石(アポフィルライト)だけのタイプ、同じく小型の結晶であるが、水晶の結晶を伴い、スカルンの塊の上を覆い、下地の緑色が透けて見えるタイプ、紫水晶を伴いその上を覆って産出するため、全体が淡い紫色を呈したようなタイプが主に見られた。その後近畿周辺のスカルン産地で見かけることがあるが、結晶が少なく、とても小さい上に量もとても少なく、神岡鉱山では何故あれほど大量に出るのか不思議な感じである。 青森県大石沢や新潟県間瀬、東京都父島では安山岩や玄武岩に伴う、インドの産状と同じタイプのものが産出するが、私自身は訪れていないので詳細を欠く。静岡県やんだ産も同様の産状である。私自身は採集に成功していないので、言い切れないが、多産するモルデン沸石の出る場所と少しずれたところで、ほぼ魚眼石だけの晶洞として産するようである。 花崗岩ペグマタイトの晶洞から産するものは、岡山県矢掛のものが有名である。少量の濁沸石を伴い晶洞の中に、やや小さいめの結晶ではあるが透明な集合体を産する。 日本の主な魚眼石(アポフィルライト)産地 青森県中里町大石沢 新潟県岩室村間瀬 東京都小笠原村父島 岐阜県神岡町神岡鉱山 岡山県矢掛町内田 愛媛県久万町槇の川 |
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